社会科学研究会

一人の人間を救えない社会科学なんていらないー日本のこと、世界のこと、人間のことを真剣に考え発信します。

脱リスク社会へ

 現代に生きる人間は労働だけに多くの時間を使っていたり、学校の活動だけに多くの時間を使っていたりします。一日の時間の大半を特定の事だけに使うことによって、リスクが特定の場所に集中して現れることになります。例えば、仕事に一日の大半を費やしている人の場合、体を壊して仕事が出来なくなったり、仕事を辞めなければならなくなった等の時に突然大きなリスクが降りかかってきます。また、そのリスクを覆い隠そうとすると、さらに大きなリスクが降りかかってきます。仕事に精を出せば、そのようなリスクが消えて無くなるわけではありません。人間の行う活動が分業的になればなるほど、このような傾向は大きくなります。では、このようなリスクを避けるためにはどのようにすれば良いのか。まず、活動を分散的に行うようにすることが必要だと私は思います。一つの事だけに打ち込むことも大切ですが、人間は一つの事だけをやっていれば生きていける生き物ではない、と私は思います。まず第一に、人間は先のことを考えてしまう生き物です。例えば、今現在打ち込んでいるものがあったとしても、人間はいつかはそれに満足しなくなるでしょう。そうすると人間は、他のものを求めるようになります。「他のものを求めるようになるまで、先のことは考えるな。」これが、リスク社会のいわば核を成している考え方です。さらに極端に言えば、「どこかの壁にぶち当たって大怪我を被るまでは、とにかく全速力で突っ走れ。」という考え方とでも言えるでしょうか。リスク社会は、予測可能性という要素を思考の範疇外に置いています。このように見ると、人間は近代から逆行しようとしているようにも見えます。人間が何とかして予測を立てられるように、何とかしてより安心して暮らすことが出来るように試行錯誤を繰り返していた時代を私は想像します。そして、現在もその途中なのです。人間には、様々な活動があります。第一に、とにかくその一つ一つを大事にし、決して安易に捨てないことがとても重要です。これは自分に向いているとかあれは向いていないと早くから見切り過ぎると、リスクに陥る可能性が大きくなりかねません。第二に、付き合う人が多様であることもリスクを避けるためにとても有効だと思います。ある特定の人とだけ付き合うのではなく、なるべく他の人とも接してみることが、いざという時に自分を助けます。第三に、生活習慣をある程度一定に保つことも、リスクを避けるために重要です。必ずしも全てを一定にする必要はありませんが、例えば朝起きる時間を一定にしたり、または一日に一回は必ずやることを定めたりすることは、自分を安定させる手助けになります。そして最も重要なことは、自分にとって必要なリスクと不必要なリスクとを分ける練習をすることです。自分にとって必要なリスクというのは、そのリスクを冒すことによって結果として自分にプラスになる要素が多いリスクのことです。不必要なリスクとは、そのリスクを冒すことによって結果として自分にマイナスとなる要素が多いリスクのことです。この両者の違いを見極めた上で、必要なリスクの方を取り、不必要なリスクを避けることがとても重要です。その判断は、あくまでも本人にしか分からないものだと思います。時には他人の力を借りて、しかしあくまでも自分で判断しながらリスクを見極めていくことが、これからを生きていくためには必要です。