社会科学研究会

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民主主義とは何か

民主主義とは何か。今回はこの問いについて考えてみたいと思います。民主主義とは元々は、少数の市民のための政治でした。紀元前にアテネで民主制が行われていた時、市民の数の割合は全体の約2割程度だったとも言われています。当時は多数の奴隷が存在していて、いわばその奴隷の存在のおかげで民主制が成り立っていました。つまり、それは決して全ての人間のための政治だったわけではなく、限られた市民のための政治だったのです。18世紀から19世紀にかけてのヨーロッパの市民革命は絶対王政を転覆させ、政治を市民の手に譲り渡したと言われています。ではここでいう市民とは、一体誰のことでしょうか。それはつまり、中産階級や資本家(ブルジョア)のことでした。ここでいう市民とは、決して生活に困窮している小作農の人々のことではありません。つまり、市民革命は国王や貴族に代わって中産階級や資本家といった人々を主役へと押し上げたのです。フランス革命に代表される当時の市民革命は、封建制・王政を破壊するとともに、大量生産体制の下で個人化された市民というものを生み出しました。20世紀には2度の世界大戦が起こりました。第二次世界大戦後、多くの国で市民が人権を持つようになりました。そして、代議制(議会制民主主義)が世界的に採用されるようになりました。また、特に冷戦終結以降に、資本主義を前提とした経済体制が世界に広まりました。これらの現象は、互いに密接に関係しています。それでは、民主主義とは何のことを指すのでしょうか。私は、民主主義とは制度のことではないと考えます。近代の市民革命は確かに制度を変えました。しかし、制度を変えれば民主主義が達成できるわけではありません。制度というものは外国から移植することが出来ても、人々の根本にある一番大切なものは移植することが出来ないからです。ですから、私は制度を変えれば現実が変わるとは思いません。革命も、マルクスの唱えた共産主義も、ルソーやカダフィ大佐が主張する直接民主制至上主義も、そのいずれもが制度を変えることを根本の目標に据えているのです。制度を変えずに現実を変える、今世紀こそこの道しかないと私は思っています。

 

民主主義への憎悪

民主主義への憎悪